二三日[#「二三日」は底本では「三三日」]めっきり暑さが増したので、中には扉《と》を明けたまま、看護婦が廊下へ雪のような裙《すそ》を出して、戸口に横《よこた》わって眠ったのもあった。遠くで犬の吠ゆる声はするが、幸いどの呻吟声《うめきごえ》も聞えずに、更けてかれこれ二時であろう。
 厠は表階子《おもてばしご》の取附《とッつ》きにもあって、そこは燈《あかり》も明《あかる》いが、風は佳《よ》し、廊下は冷たし、歩行《ある》くのも物珍らしいので、早瀬はわざと、遠い方の、裏階子の横手の薄暗い中へ入った。
 ざぶり水を注《か》けながら、見るともなしに、小窓の格子から田圃《たんぼ》を見ると、月は屋《や》の棟に上ったろう、影は見えぬが青田の白さ。
 風がそよそよと渡ると見れば、波のように葉末が分れて、田の水の透いたでもなく、ちらちらと光ったものがある。緩い、遅い、稲妻のように流れて、靄《もや》のかかった中に、土のひだが数えられる、大巌山の根を低く繞《めぐ》って消えたのは、どこかの電燈が閃《ひらめ》いて映ったようでもあるし、蛍が飛んだようにも思われる。
 手水《ちょうず》と、その景色にぶるぶると冷くなって
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