を通ると、気が遠くなりそうに、仰向けに恍惚《うっとり》したが、
「早瀬さん。」
「お蔦。」
「早瀬さん……」
「むむ、」
「先《せ》、先生が逢っても可いって、嬉しいねえ!」
酒井は、はらはらと落涙した。
おとずれ
四十八
病室の寝台《ねだい》に、うつらうつらしていた早瀬は、フト目が覚めたが……昨夜あたりから、歩行《ある》いて厠《かわや》へ行《ゆ》かれるようになったので、もう看護婦も付いておらぬ。毎晩|極《きま》ったように見舞ってくれた道子が、一昨日《おととい》の夜《よ》の……あの時から、ふッつり来ないし、一寝入りして覚めた今は、昼間、菅子に逢ったのも、世を隔てたようで心寂しい。室内を横伝い、まだ何か便り無さそうだから、寝台の縁に手をかけて、腰を曲げるようにして出たが、扉《と》の外になると、もう自分でも足の確《たしか》なのが分って、両側のそちこちに、白い金盥《かなだらい》に昇汞水《しょうこうすい》の薄桃色なのが、飛々の柱燈《はしらあかり》に見えるのを、気の毒らしく思うほど、気も爽然《さっぱり》して、通り過ぎた。
どこも寝入って、寂《しん》として、この
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