で、は……」と云う。
「いつもそうか。」
 と尋ねた時、衣兜《かくし》に両手を突込んで、肩を揺《ゆす》った。
「はい、いつでも、」
「む、そうか。」と言い棄てに、荒らかに廊下を踏んだ。

「あれ、主人《あるじ》の跫音《あしおと》でございます。」
「院長ですか。」
 道子は色を変えて、
「あれ、どうしましょう、こちらへ参りますよ。アレ、」
「院長が入院患者を見舞うのに、ちっとも不思議はありません。」と早瀬は寝ながら平然として云った。
 目も尋常《ただ》ならず、おろおろして、
「両親も知りませんが、主人《あるじ》は酷《ひど》い目に逢わせますのでございますよ。」としめ木にかけられた様に袖を絞って立窘《たちすく》むと、
「寝台《ねだい》の下へお隠れなさい。可《い》いから、」
 とむっくと起きた、早瀬は毛布《けっと》を飜《ひるがえ》して、夫人の裾を隠しながら、寝台に屹《きっ》と身構えたトタンに、
「院長さんが御廻診ですよう!」と看護婦の金切声が物凄《ものすご》く響いたのである。
 理順は既に室に迫って、あわや開けようとすると、どこに居たか、忽然《こつぜん》として、母夫人が立露《たちあらわ》れて、
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