》ぶ花火の音、松の梢《こずえ》に富士より高く流星も上ったが、今は静《しずか》になった。
壇の下から音もなく、形の白い脊の高いものが、ぬいと廊下へ出た、と思うと、看護婦二人は驚いて退《すさ》った。
来たのは院長、医学士河野理順である。
ホワイト襯衣《しゃつ》に、縞《しま》の粗《あら》い慢《ゆるやか》な筒服《ずぼん》、上靴を穿《は》いたが、ビイルを呷《あお》ったらしい。充血した顔の、額に顱割《はちわれ》のある、髯《ひげ》の薄い人物で、ギラリと輝く黄金縁《きんぶち》の目金越に、看護婦等を睨《ね》め着けながら、
「君たちは……」
と云うた眼《まなこ》が、目金越に血走った。
「道子に附いているんじゃないか。」
「は、」と一|人《にん》が頭《こうべ》を下げる。
「どうしたか。」
「は、早瀬さんの室を、お見舞になります時は、いつも私《わたくし》どもはお附き申しませんでございます。」と爽《さわやか》な声で答えた。
「なぜかい。」
「奥様がおっしゃいます。御本宅の英吉様の御朋友ですから、看護婦なぞを連れては豪《えら》そうに見えて、容体ぶるようで気恥かしいから、とおっしゃって、お連れなさいませんの
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