ん容態ですから。」
「何から何まで難有《ありがと》う存じます……一人の親を……済みませんですねえ。」
 とその手巾が目に障る。
「済まないのは私こそ。でもよく会場が抜けられましたな。」
「はい、色艶が悪いから、控所の茶屋で憩《やす》むように、と皆さんが、そう言って下さいましたから、好《い》い都合に、点燈頃《あかりのつきごろ》の混雑紛れに出ましたけれど、宅の車では悪うございますから、途中で辻待のを雇いますと、気が着きませんでしたが、それが貴下《あなた》、片々|蠣目《かきめ》のようで、その可恐《こわ》らしい目で、時々振返っては、あの、幌《ほろ》の中を覗きましてね、私はどんなに気味が悪うござんしてしょう。やっとこの横町の角で下りて、まあ、御門まで参りましたけれども、もしかお客様でも有っては悪いから、と少時《しばらく》立っておりましたの。」
「お心づかい、お察し申します。」
 と頭《こうべ》を下げて、
「島山さんの、お菅さんには。」
「今しがた参りました。あんなに遅くまで――こちら様に。」
「いいえ。」
「それでは道寄りをいたしましたのでございましょう。灯《あかり》の点《つ》きます少し前に見え
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