《おも》に月輪を纏《まと》めた風情に、白やかな婦《おんな》の顔がそこを覗《のぞ》いた。
 門の扉《と》が開《あ》くでもなしに……続いて雪のような衣紋《えもん》が出て、それと映合《うつりあ》ってくッきりと黒い鬢《びん》が、やがて薄お納戸の肩のあたり、きらりと光って、帯の色の鮮麗《あざやか》になったのは――道子であった。
 門に立忍んで、密《そ》と扉を開けて、横から様子を伺ったものである。
 一目見ると、早瀬は、ずいと立って、格子を開けながら、手招ぎをする。と、立直って後姿になって、AB《アアベエ》横町の左右を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》す趣であったが、うしろ向きに入って、がらがらと後を閉めると、三足ばかりを小刻みに急いで来て、人目の関には一重も多く、遮るものが欲しそうに、また格子を立てた。
「ようこそ、」と莞爾《にっこり》して云う。
 姉夫人は、口を、畳んだ手巾《ハンケチ》で圧《おさ》えたが、すッすッと息が忙《せわ》しく、
「誰方《どなた》も……」
「誰も。」
「小使さんは?」
 ともう馴染んだか尋ね得た。
「あれは朝っから、貞造の方へ遣ってあります。目の離せませ
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