ども、御主人の医学士は、非常に貴女を愛していらっしゃるために、恐ろしく嫉妬深い、と島山さんのに、聞きました。
ほとんど当惑していた処へ、今日のおいでは実に不思議と云っても可い。一言(父よ。)とおっしゃって、とそれまでも望むんじゃないのです。弥陀《みだ》の白光《びゃっこう》とも思って、貴女を一目と、云うのですから、逢ってさえ下されば、それこそ、あの、屋中《うちじゅう》真黒《まっくろ》に下った煤《すす》も、藤の花に咲かわって、その紫の雲の中に、貴女のお顔を見る嬉しさはどんなでしょう。
そうなれば、不幸極まる、あわれな、情ない老人が、かえって百万人の中に一人も得られない幸福なものとなって、明かに端麗な天人を見ることを得て、極楽往生を遂げるんです、――夫人《おくさん》。」
と云った主税の声が、夫人の肩から総身へ浸渡るようであった。
「貞造は、貴女の実《うみ》の父親で、またある意味から申すと、貴女の生命の恩人ですよ。」
「は……い。」
「会は混雑しましょう。若竹座は大変な人でしょう。それに夜も更《ふ》けると申しますから、人目を紛らすのに仔細《しさい》ありません。得難い機会です。私《わたくし
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