で打附《ぶつか》ったようなものだ。一ツ穴の狐だい。己《おら》あまた、猫のさかるような高い処は厭だからよ。勘当された息子じゃねえが、二階で寝ると魘《うな》されらあ。身分相当割床と遣るんだ。棟割《むなわり》に住んでるから、壁隣の賑《にぎや》かなのが頼もしいや。」
「不可《いけ》ませんよ、そんなことをお言いなすっちゃ、選好《えりこの》んでこのお座敷へいらっしゃらないだって、幾らでも空いてるじゃありませんか。」
「空いてる! こう、たった今座敷はねえ、おあいにくだと云ったじゃねえか。気障《きざ》は言わねえ、気障な事は云わねえから、黙って早く燗《つ》けて来ねえよ。」
いいがかりに止むを得ず、厭な顔して、
「じゃ、御酒を上るだけになすって下さいよ、お肴《さかな》は?」
「肴は己《おら》が盤台にあら。竹の皮に包んでな、斑鮭《ぶちじゃけ》の鎌ン処《とこ》があるから、そいつを焼いて持って来ねえ。蔦ちゃんが好《すき》だったんだが、この節じゃ何にも食わねえや、折角残して帰《けえ》っても今日も食うめえ。」
と独言《ひとりごと》になって、ぐったりして、
「媽々《かかあ》に遣るんじゃ張合《はりええ》が無え。焼
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