尾の三郎案内致せ。鵯越《ひよどりごえ》の逆落しと遣れ。裏階子《うらばしご》から便所だ、便所だ。」
どっかの夜講で聞いたそうな。
二十八
手水《ちょうず》鉢の処へめ[#「め」に傍点]組はのっそり。里心のついた振られ客のような腰附で、中庭越に下座敷をきょろきょろと[#「きょろきょろと」は底本では「きよろきょろと」]※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》したが、どこへ何んと見当附けたか、案内も待たず、元の二階へも戻らないで、とある一室《ひとま》へのっそりと入って、襖際《ふすまぎわ》へ、どさりとまた胡坐《あぐら》になる。
女中が慌《あわただ》しく駈込んで、
「まあ、どこへいらっしゃるんですか。」
と、たしなめるように云うと、
「ここにいらっしゃら。ははは、心配するな。」
「困りますよ。隣のお座敷には、お客様が有るじゃありませんか。」
「構わねえ、一向構わねえ。」
「こちらがお構いなさいませんでも、あちら様で。」
「可《い》いじゃねえか、お互《たげえ》だ。こんな処へ来て何も、向う様だって遠慮はねえ。大家様の隠居殿の葬礼《ともれい》に立つとってよ、町内が質屋
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