言うな、芸者の霜枯じゃあるめえし。」
 と盤台《はんだい》をどさりと横づけに、澄まして天秤《てんびん》を立てかける。微酔《ほろえい》のめ[#「め」に傍点]組の惣助。商売《あきない》の帰途《かえり》にまたぐれた――これだから女房が、内には鉄瓶さえ置かないのである。
 立迎えた小待合の女中は、坐りもやらず中腰でうろうろして、
「全くおあいにくなんですよ。」
 と入口を塞いだ前へ、平気で、ずんと腰を下ろして、
「見ねえ、身もんでえをする度《たんび》に、どんぶりが鳴らあ。腹の虫が泣くんじゃねえ、金子《かね》の音だ。びくびくするねえ。お望みとありゃ、千両束で足の埃《ほこり》を払《はた》いて通るぜ。」
 とあげ膝で、ボコポン靴をずぶりと脱いで、装塩《もりじお》のこなたへボカン。
 声が高いのでもう一人、奥からばたばたと女中が出て来て、推重《おっかさ》なると、力を得たらしく以前の女中が、
「ほんとうにお前さん、お座敷が無いのですよ。」
「看板を下ろせ、」
 と喚《わめ》いて、
「座敷がなくば押入へ案内しねえ、天井だって用は足りらい。やあ、御新規お一人様あ、」
 と尻上りに云って、外道面《げどうづら》
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