来ない。我慢が出来ない。我慢が出来ない。あんな可愛いお嬢さんにお育てなすったお手柄は、真砂町の夫人《おくさん》だけれど、産《う》……産んだのは私だよ。私の子だよ、お蔦さん、身体《からだ》へ袖が触る度《たんび》に、胸がうずいてならなんだ、御覧よ、乳のはったこと。」
 と、手を引入れて引緊《ひきし》めて、わっとばかりに声を立てると、思わず熟《じっ》と抱き合って、
「あれ、しっかりおし、小芳さん、癪《しゃく》が起ると不可《いけな》いよ。私たちは何の因果で、」
 芸者なんぞになったとて、色も諸分《しょわけ》も知抜いた、いずれ名取の婦《おんな》ども、処女《むすめ》のように泣いたのである。


     小待合

       二十七

「こうこう、姉《あね》え、姉え、目を開《あ》いて口を利きねえ。もっとも、かっと開いたところで、富士も筑波も見えるかどうだか、覚束ねえ目だけれどよ。はははは、いくら江戸|前《めえ》の肴屋《さかなや》だって、玄関から怒鳴り込む奴があるかい。お客だぜ。お客様だぜ。おい、お前《めえ》の方で惣菜は要らなくっても、己《おら》が方で座敷が要るんだ。何を! 座敷が無え、古風な事を
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