の口を尖らす、相好塩吹の面のごとし。
「そっちの姉《あねえ》は話せそうだな。うんや、やっぱりお座敷ござなく面《づら》だ。変な面だな。はははは、トおっしゃる方が、あんまり変でもねえ面でもねえ。」
 行詰った鼻の下へ、握拳《にぎりこぶし》を捻込《ねじこ》むように引擦《ひっこす》って、
「憚《はばか》んながらこう見えても、余所行《よそゆ》きの情婦《いろ》があるぜ。待合《まちええ》へ来て見繕いで拵《こしれ》えるような、べらぼうな長生《ながいき》をするもんかい。
 おう、八丁堀のめ[#「め」に傍点]の字が来たが、の、の、承知か、承知か、と電話を掛けねえ。柳橋の小芳さん許《とこ》だ。柏屋《かしわや》の綱次《つなじ》と云う美しいのが、忽然《こつぜん》として顕《あらわ》れらあ。
 どうだ、驚いたか。銀行の頭取が肴屋に化けて来たのよ。いよ、御趣向!」
 と変な手つき、にゅうと女中の鼻頭《はなさき》へ突出して、
「それとも半纏着《はんてんぎ》は看板に障るから上げねえ、とでも吐《ぬ》かして見ろ。河岸から鯨を背負《しょ》って来て、汝《てめえ》ン許《とこ》で泳がせるぞ、浜町|界隈《かいわい》洪水だ。地震より恐怖
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