静岡の民友新聞と云うのを取りましてね、朝起きると直ぐ覗《のぞ》いて、もう見落しはしなかろうか、と隙《ひま》さえあれば、広告まで読みますんですが、ちっとも早瀬さんの事を書いてあったことはありませんから、どうしておいでだか分りません。
 この頃じゃ落胆《がっかり》して、勢《せい》も張合も無いんですけれども、もしやにひかされては見ています。
 たった一度、早瀬さんのことを書いてあったのがござんしてね、切抜いて紙入の中へ入れてありますから、今、お目に掛けますよ。」

       二十六

 お蔦は蓐《しとね》に居直って、押入の戸を右に開ける、と上も下も仏壇で、一ツは当家の。自分でお蔦が守をするのは同居だけに下に在る。それも何となくものあわれだけれども、後姿が褄《つま》の萎《な》えた、かよわい状《さま》は、物語にでもあるような。直ぐにその裳《もすそ》から、仏壇の中へ消えそうに腰が細く、撫肩がしおれて、影が薄い。
 紙入の中は、しばらく指の尖《さき》で掻探さねばならなかったほど、可哀相に大切《だいじ》に蔵《しま》って、小さく、整然《きちん》と畳んで、浜町の清正公《せいしょうこう》の出世開運のお札
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