と一所にしてあった、その新聞の切抜を出す、とお妙は早や隔心《へだてごころ》も無く、十年の馴染のように、横ざまに蓐《とこ》に凭《もた》れながら、頸《うなじ》を伸《のば》して、待構えて、
「ちょいと、どんなことが書いてあって。また掏賊《すり》を助けたりなんか、不可《いけ》ないことをしたのじゃないの。急いで聞かして頂戴な。」
「いいえ、まあ、貴女がお読みなさいまし。」
「拝見な。」
と寝転ぶようにして、頬杖《ほおづえ》ついて、畳の上で読むのを見ながら、抜きかけた、仏壇の抽斗《ひきだし》を覗くと、そこに仰向けにしてある主税の写真を密《そっ》と見て、ほろりとしながら、カタリと閉めた。懐中《ふところ》へ、その酒井先生恩賜の紙幣《さつ》の紙包を取って、仏壇の中に落ちた線香立ての灰を、フッフッと吹いて、手で撫でる。
戸外《おもて》を金魚売が通った。
「何でしょう。この小使は、また可訝《おかし》なものじゃないの、」
とお妙が顔を赤うして云う。新聞に書いたのは(AB《アアベエ》横町。)と云う標題《みだし》で、西の草深のはずれ、浅間に寄った、もう郡部になろうとするとある小路を、近頃|渾名《あだな》して
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