悪いからそう云って来たけれど、髪なんぞ結《い》わなくったって構わなくってよ。ちっとも私、結いたくはないの、」
と投出したように云って、
「早瀬さんの、あの、主税さんの奥さんに、私、お目にかかれなくって?」
「姉さん、」
ト、障子の内から。
「あい、」と小芳が立構えで、縁へ振向いてそなたを見込むと、
「私、そこへ行っても可《い》いかい?」
小芳が急いで縁づたいで、障子を向うへ押しながら、膝を敷居越に枕許。
枕についた肩細く、半ば掻巻《かいまき》を藻脱けた姿の、空蝉《うつせみ》のあわれな胸を、痩《や》せた手でしっかりと、浴衣に襲《かさ》ねた寝衣《ねまき》の襟の、はだかったのを切なそうに掴《つか》みながら、銀杏返しの鬢《びん》の崩れを、引結《ひきゆわ》えた頭《かしら》重げに、透通るように色の白い、鼻筋の通った顔を、がっくりと肩につけて、吻《ほっ》と今|呼吸《いき》をしたのはお蔦である。
二十二
お蔦は急に起上った身体《からだ》のあがきで、寝床に添った押入の暗い方へ顔の向いたを、こなたへ見返すさえ術《じゅつ》なそうであった。
枕から透く、その細う捩《よ》れた背《せ
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