たんでございます。」
「ええ、御病気。」と憂慮《きづかわ》しげに打傾く。
「はあ、久しい間、」
「沢山《たんと》、悪くって?」
「いいえ、そんなでもないようですけれど、臥《ふせ》っておりますから、お髪《ぐし》はあげられませんでしょう。ですが、御緩《ごゆっ》くり、まあ、なさいまし。この頃では、お増さんも気に掛けて、早く帰って参りますから、ほんとうに……お嬢さん、」
と擦寄って、うっかりと見惚《みと》れている。
上框《あがりぐち》が三畳で、直ぐ次がこの六畳。前の縁が折曲《おりまが》った処に、もう一室《ひとま》、障子は真中《まんなか》で開いていたが、閉った蔭に、床があれば有るらしい。
向うは余所《よそ》の蔵で行詰ったが、いわゆる猫の額ほどは庭も在って、青いものも少しは見える。小綺麗さは、酔《のん》だくれには過ぎたりといえども、お増と云う女房の腕で、畳も蒼《あお》い。上原とあった門札こそ、世を忍ぶ仮の名でも何でもない、すなわちこれめ[#「め」に傍点]組の住居《すまい》、実は女髪結お増の家と云ってしかるべきであろう。
惣助の得意先は、皆、渠《かれ》を称して恩田百姓と呼ぶ。註に不及《およば
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