しのみだれさえ、忘れたように瞻《みまも》って、
「お妙様。」
「小母さんは、早瀬さんの……あの……お蔦さん?」
二十一
「いらっしゃいまし、」
と小芳が太《いた》く更《あらた》まって、三指を突いた時、お妙は窮屈そうに六畳の上座《じょうざ》へ直されていたのである。
「貴嬢《あなた》、まあ、どうしてこんな処へ、たった御一人なんですか。途中で何かございませんでしたか、お暑かったでしょうのに。唯今《ただいま》手拭を絞って差上げます。」
と一斉《いっとき》に云いかけられて、袖で胸を煽《あお》いでいた手を留めて、
「暑いんじゃないの、私|極《きまり》が悪いから、それでもって、あの、」
と袂《たもと》を顔に当てて、鈴のような目ばかり出して、
「小母さんが、お蔦さん?」と低声《こごえ》でまた聞いた。
「あれ、どうしましょう。あんまり思懸けない方がお見えなさいましたもんですから、私は狼狽《とっち》てしまってさ。ほほほ、いうことも前後《あとさき》になるんですもの、まあ、御免なさいまし。
私は……じゃありません。その……何でございますよ、お蔦さんが煩らって寝ておりますので、見舞に来
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