さい。」
 と手紙を見い見い忙《せわ》しそうに云う。いかにもここで膳を出したはじめには、小児《こども》が二人とも母様《かあさん》にこびりついて、坊やなんざ、武者振つく勢《いきおい》。目の見えない娘《こ》は、寂《さみ》しそうに坐ったきりで、しきりに、夫人の膝から帯をかけて両手で撫でるし、坊やは肩から負われかかって、背ける顔へ頬を押着《おッつ》け、躱《かわ》す顔の耳許《みみもと》へかじりつくばかりの甘え方。見るまにぱらぱらに鬢《びん》が乱れて、面影も痩《や》せたように、口のあたりまで振かかるのを掻《か》い払うその白やかな手が、空を掴《つか》んで悶《もだ》えるようで、(乳母《ばあや》来ておくれ。)と云った声が悲鳴のように聞えた。乳母《うば》が、(まあ、何でござります、嬢ちゃまも、坊っちゃまも、お客様の前で、)と主税の方を向いたばかりで、いつも嬢さまかぶれの、眠ったような俯目《ふしめ》の、顔を見ようとしないので、元気なく微笑《ほほえ》みながら、娘の児の手を曳《ひ》くと、厭々それは離れたが、坊やが何と云っても肯《き》かなくって、果は泣出して乱暴するので、時の間も座を惜しそうな夫人が、寝かしつけに
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