聞いて屋賃の処を。」
「もう、私は、」と堪《たま》りかねたか、早瀬の膝をハタと打つと、赤らめた顔を手巾《ハンケチ》で半ば蔽《おお》いながら、茶店を境内へ衝《つっ》と出る。
十三
どこも変らず、風呂敷包を首に引掛けた草鞋穿《わらじばき》の親仁《おやじ》だの、日和下駄で尻端折《しりはしょ》り、高帽という壮佼《あにい》などが、四五人境内をぶらぶらして、何を見るやら、どれも仰向いてばかり通る。
石段の下あたりで、緑に包まれた夫人の姿は、色も一際|鮮麗《あざやか》で、青葉越に緋鯉《ひごい》の躍る池の水に、影も映りそうに彳《たたず》んだが、手巾《ハンケチ》を振って、促がして、茶店から引張り寄せた早瀬に、
「可い加減になさいよ、極《きま》りが悪いじゃありませんか。」
「はい、お忘れもの。」
と澄ました顔で、洋傘《ひがさ》を持って来た柄の方を返して出すと、夫人は手巾を持換えて、そうでない方の手に取ったが……不思議にこの男のは汗ばんでいなかった。誰のも、こういう際は、持ったあとがしっとり[#「しっとり」に傍点]、中には、じめじめとするのさえある。……
夫人はちょいと俯目《ふしめ
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