と》れると云うので、」
と肩を怒らしたは、咳こうとしたらしいが、その力も無いか、口へ手を当てて俯向《うつむ》いた。
「何より利くそうなが、主あ飲《のま》しったか。」
「さればじゃ、方々様へ御願い申して頂いて来ては、飲んだにも、飲んだにも、大《おおき》な芭蕉を葉ごとまるで飲んだくらいじゃけれど、少しも……」
とがっくり首を掉《ふ》って、
「験《げん》が見えぬじゃて。」
験《しるし》なきにはあらずかし、御身の骸《むくろ》は疾《と》く消えて、賤機山に根もあらぬ、裂けし芭蕉の幻のみ、果敢《はか》なくそこに立てるならずや。
ごほごほと頷《うなず》き頷き、咳入りつつ、婆さんが持って来た甘酒を、早瀬が取ろうとするのを、取らせまいと、無言で、はたと手で払った。この時、夫人は手巾《ハンケチ》で口を圧《おさ》えながら、甘酒の茶碗を、衝《つ》と傍《わき》へ奪ったのである。
十二
「芭蕉の葉煎じたを立続けて飲ましって、効験《ききめ》の無い事はあるまいが、疾《はや》く快《よ》うなろうと思いなさる慾《よく》で、焦《あせ》らっしゃるに因ってなおようない、気長に養生さっしゃるが何より薬じゃ。
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