藁草履《わらぞうり》を引摺《ひきず》って、勢《いきおい》の無さは埃《ほこり》も得《え》立てず、地の底に滅入込《めりこ》むようにして、正面から辿《たど》って来て、ここへ休もうとしたらしかったが、目ももう疎《うと》くて、近寄るまで、心着かなんだろう。そこに貴婦人があるのを見ると、出かかった足を内へ折曲げ、杖で留めて、眩《まばゆ》そうに細めた目に、あわれや、笑を湛《たた》えて、婆さんの顔をじろりと見た。
「おお、貞《てい》さんか。」
と耳立つほど、名を若く呼んだトタンに、早瀬は屹《きっ》となって鋭く見た。
が、夫人は顔を背けたから何にも知らない。
「主《ぬし》あ、どうさしった、久しく見えなんだ。」
と云うさえ、下地はあるらしい婆さんの方が、見たばかりでもう、ごほごほ。
「方なしじゃ、」
思いの他《ほか》、声だけは確であったが、悪寒がするか、いじけた小児《こども》がいやいや[#「いやいや」に傍点]をすると同一《おなじ》に縮《すく》めた首を破れた寝ン寝子の襟に擦《こす》って、
「埒明《らちあ》かんで、久しい風邪でな、稼業は出来ず、段々弱るばっかりじゃ。芭蕉の葉を煎じて飲むと、熱が除《
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