ろう》じまし、鳩の喜びますこと、沢山《たんと》奥様に頂いて、クウクウかいのう、おおおお、」
 と合点《がってん》々々、ほたほた笑《えみ》をこぼしながら甘酒を釜から汲《く》む。
 見る見るうち、輝く玄潮《くろしお》の退《ひ》いたか、と鳩は掃いたように空へ散って、咄嗟《とっさ》に寂寞《せきばく》とした日当りの地の上へ、ぼんやりと影がさして、よぼよぼ、蠢《うごめ》いて出た者がある。
 鼻の下はさまででないが、ものの切尖《きっさき》に痩《や》せた頤《おとがい》から、耳の根へかけて胡麻塩髯《ごましおひげ》が栗の毬《いが》のように、すくすく、頬肉《ほおじし》がっくりと落ち、小鼻が出て、窪んだ目が赤味走って、額の皺《しわ》は小さな天窓《あたま》を揉込《もみこ》んだごとく刻んで深い。色|蒼《あお》く垢《あか》じみて、筋で繋《つな》いだばかりげっそり肩の痩せた手に、これだけは脚より太い、しっかりした、竹の杖を支《つ》いたが、さまで容子《ようす》の賤《いや》しくない落魄《おちぶれ》らしい、五十|近《ぢか》の男の……肺病とは一目で分る……襟垢がぴかぴかした、閉糸《とじいと》の断《き》れた、寝ン寝子を今時分。
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