》でたしなめるように云った、(先刻のあんなもの)は――鮪の茶漬で――慶喜公の邸あとだという、可懐《なつか》しいお茶屋から、わざと取寄せた午飯《ひる》の馳走の中に、刺身は江戸には限るまい、と特別に夫人が膳につけたのを、やがてお茶漬で掻込《かっこ》んだのを見て、その時は太《いた》く嬉しがった。
得てこれを嗜《たしな》むもの、河野の一門に一人も無し、で、夫人も口惜《くやし》いが不可《いけな》いそうである。
「ここで甘酒を飲まなくっては、鳩にして豆、」
と云うと、婆さんが早耳で、
「はい、盆に一杯五厘|宛《ずつ》でございます。」
「私は鳩と遊びましょう。貴下《あなた》は甘酒でも冷酒でも御勝手に召食《めしあが》れ。」
と前の床几《しょうぎ》に並べたのを、さらりと撒《ま》くと、颯《さっ》と音して、揃いも揃って雉子鳩《きじばと》が、神代《かみよ》に島の湧《わ》いたように、むらむらと寄せて来るので、また一盆、もう一盆、夫人は立上って更に一盆。
「一杯、二杯、三杯、四杯、五杯!」
早瀬はその数を算《かぞ》えながら、
「ああ、僕はたった一杯だ。婆さん甘酒を早く、」
「はいはい、あれ、まあ、御覧《ご
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