なしの一枚|袷《あわせ》という扮装《でたち》のせいで、また着換えていた――この方が、姿も佳《よ》く、よく似合う。ただし媚《なまめか》しさは少なくなって、いくらか気韻が高く見えるが、それだけに品が可い。
セルで足袋を穿《は》いては、軍人の奥方めく、素足では待合から出たようだ、と云って邸《やしき》を出掛《でが》けに着換えたが、膚《はだ》に、緋《ひ》の紋縮緬《もんちりめん》の長襦袢《ながじゅばん》。
二人の児《こ》の母親で、その燃立つようなのは、ともすると同一《おなじ》軍人好みになりたがるが、垢《あか》抜けのした、意気の壮《さかん》な、色の白いのが着ると、汗ばんだ木瓜《ぼけ》の花のように生暖《なまあたたか》なものではなく、雪の下もみじで凜《りん》とする。
部屋で、先刻《さっき》これを着た時も、乳を圧《おさ》えて密《そっ》と袖を潜《くぐ》らすような、男に気を兼ねたものではなかった。露《あらわ》にその長襦袢に水紅《とき》色の紐をぐるぐると巻いた形《なり》で、牡丹の花から抜出たように縁の姿見の前に立って、
(市川菅女。)と莞爾々々《にこにこ》笑って、澄まして袷を掻取《かいと》って、襟を合わせ
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