敷。開けた障子に背《せな》を凭《も》たせて、立膝の褄は深いが、円く肥えた肱《ひじ》も露《あらわ》に夫人は頬を支えていた。
「朝から戸迷《とまど》いをなすっては、泊ったら貴下、どうして、」
と振向いた顔の、花の色は、合歓《ねむ》の影。
「へへへへへ」
と、向うに控えたのは、呉服屋の手代なり。鬱金《うこん》木綿の風呂敷に、浴衣地が堆《うずたか》い。
二人連
十
午後《ひるすぎ》、宮ヶ崎町の方から、ツンツンとあちこちの二階で綿を打つ音を、時ならぬ砧《きぬた》の合方にして、浅間の社の南口、裏門にかかった、島山夫人、早瀬の二人は、花道へ出たようである。
門際の流《ながれ》に臨むと、頃日《このごろ》の雨で、用水が水嵩《みずかさ》増して溢《あふ》るるばかり道へ波を打って、しかも濁らず、蒼《あお》く飜《ひるがえ》って竜《りょう》の躍るがごとく、茂《しげり》の下《もと》を流るるさえあるに、大空から賤機山《しずはたやま》の蔭がさすので、橋を渡る時、夫人は洋傘《かさ》をすぼめた。
と見ると黒髪に変りはないが、脊がすらりとして、帯腰の靡《なび》くように見えたのは、羽織
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