ゃりと遣って、息も吐《つ》かずに、番茶を呷《あお》る。
「あれ、嘘ばっかり。貴下は柳橋主義の癖に、」
夫人は薄笑いの目をぱっちりと、睫毛《まつげ》を裂いたように黒目勝なので睨《にら》むようにした。
「ちょいと、吃驚《びっくり》して。……そら、御覧なさい、まだ驚かして上げる事があるわ。」
と振返りざまに背後《うしろ》向きに肩を捻《ね》じて、茶棚の上へ手を遣った、活溌な身動《みじろ》きに、下交《したがい》の褄《つま》が辷《すべ》った。
そのまま横坐りに見得もなく、長火鉢の横から肩を斜めに身を寄せて、翳《かざ》すがごとく開いて見せたは……
「や! 読本《とくほん》を買いましたね。」
「先生、これは何て云うの?」
「冷評《ひやか》しては不可《いけ》ませんな、商売道具を。」
「いいえ、真面目に、貴下がこの静岡で、独逸語の塾を開くと云うから、早いでしょう、もう買って来たの。いの一番のお弟子入よ。ちょいと、リイダアと云うのを、独逸では……」
「レエゼウッフ(読本)――月謝が出ますぜ。」
「レエゼウッフ。」
九
「あの、何?」
と真《まこと》に打解けたものいいで、
「精々勉強
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