り》笑って、瞥《ちらり》と見て、
「それにもう内が台なしですからね、私が一週間も居なかった日にゃ、門前|雀羅《じゃくら》を張るんだわ。手紙一ツ来ないんですもの。今朝起抜けから、自分で払《はたき》を持つやら、掃出すやら、大騒ぎ。まだちっとも片附ないんですけれど、貴下《あなた》も詰らなかろうし、私も早く逢いたいから、可《い》い加減にして、直ぐに車を持たせて、大急ぎ、と云ってやったんですがね。
あの、地方《いなか》の車だって疾《はや》いでしょう。それでも何よ、まだか、まだか、と立って見たり坐って見たり、何にも手につかないで、御覧なさい、身化粧《みじまい》をしたまんま、鏡台を始末する方角もないじゃありませんか。とうとう玄関の処《とこ》へ立切りに待っていたの。どこを通っていらしって?」
返事も聞かないで、ボンボン時計を打仰ぐに、象牙のような咽喉《のど》を仰向け、胸を反《そ》らした、片手を畳へ。
「まあ、まだ一時間にもならないのね。半日ばかり待ってたようよ。途中でどこを見て来ました。大東館の直《じ》きこっちの大きな山葵《わさび》の看板を見ましたか、郵便局は。あの右の手の広小路の正面に、煉瓦の建
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