で、歴然《ありあり》と映っている。
姿見の前に、長椅子《ソオフア》一脚、広縁だから、十分に余裕《ゆとり》がある。戸袋と向合った壁に、棚を釣って、香水、香油、白粉《おしろい》の類《たぐい》、花瓶まじりに、ブラッシ、櫛などを並べて、洋式の化粧の間と見えるが、要するに、開き戸の押入を抜いて、造作を直して、壁を塗替えたものらしい。
薄萌葱《うすもえぎ》の窓掛を、件《くだん》の長椅子《ソオフア》と雨戸の間《あい》へ引掛《ひっか》けて、幕が明いたように、絞った裙《すそ》が靡《なび》いている。車で見た合歓《ねむ》の花は、あたかもこの庭の、黒塀の外になって、用水はその下を、門前の石橋続きに折曲って流るるので、惜いかな、庭はただ二本《ふたもと》三本《みもと》を植棄てた、長方形の空地に過ぎぬが、そのかわり富士は一目。
地を坤軸《こんじく》から掘覆《ほりかえ》して、将棊倒《しょうぎだおし》に凭《よ》せかけたような、あらゆる峰を麓《ふもと》に抱《いだ》いて、折からの蒼空《あおぞら》に、雪なす袖を飜《ひるがえ》して、軽くその薄紅《うすくれない》の合歓の花に乗っていた。
「結構な御住居《おすまい》でございま
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