おなぶんなすったんでございましょうねえ。」
「御串戯《ごじょうだん》おっしゃっては不可《いけ》ません。」
「それでは、どんなお話でございましたの。」
「実は、どういう御婦人だ、と聞かれまして……」
「はあ、」
「何ですよ、貴女、腹をお立てなすっちゃ困りますが、ええ、」
 と俯向《うつむ》いて、低声《こごえ》になり、
「女|俳優《やくしゃ》だ、と申しました。」
「まあ、」と清《すずし》い目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、屹《きっ》と睨《にら》むがごとくにしたが、口に微笑が含まれて、苦しくはない様子。
「沢山《たんと》、そんなことを云ってお冷かしなさいまし。私はもう下りますから、」
「どちらで、」
 と遠慮らしく聞くと、貴婦人は小児の事も忘れたように、調子が冴えて、
「静岡――ですからその先は御勝手におなぶり遊ばせ、室《へや》が違いましても、私の乗っております内は殺生でございますわ。」
「御心配はございません。僕も静岡で下りるんです。」
「お湯《ぶう》。」
 と小児が云う時、一所に手にした、珈琲はまだ熱い。

       三

「静岡はどちらへお越しなさいます。
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