》しそうに、熟《じっ》と見ながら、時々思出したように、隣の椅子の上に愛らしく乗《のっ》かかった、かすりで揃の、袷《あわせ》と筒袖の羽織を着せた、四ツばかりの男の児《こ》に、極めて上手な、肉叉《フォーク》と小刀《ナイフ》の扱い振《ぶり》で、肉《チキン》を切って皿へ取分けてやる、盛装した貴婦人があった。
 見渡す青葉、今日しとしと、窓の緑に降りかかる雨の中を、雲は白鷺《しらさぎ》の飛ぶごとく、ちらちらと来ては山の腹を後《しりえ》に走る。
 函嶺《はこね》を絞る点滴《したたり》に、自然《おのずから》浴《ゆあみ》した貴婦人の膚《はだ》は、滑かに玉を刻んだように見えた。
 真白なリボンに、黒髪の艶《つや》は、金蒔絵《きんまきえ》の櫛の光を沈めて、いよいよ漆のごとく、藤紫のぼかしに牡丹《ぼたん》の花、蕊《しべ》に金入の半襟、栗梅の紋お召の袷《あわせ》、薄色の褄《つま》を襲《かさ》ねて、幽《かす》かに紅の入った黒地友染の下襲《したがさ》ね、折からの雨に涼しく見える、柳の腰を、十三の糸で結んだかと黒繻子《くろじゅす》の丸帯に金泥でするすると引いた琴の絃《いと》、添えた模様の琴柱《ことじ》の一枚《ひとつ
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