と図に乗って饒舌《しゃべ》るのを、おかしそうに聞惚《ききと》れて、夜の潮《しお》の、充ち満ちた構内に澪標《みおつくし》のごとく千鳥脚を押据えて憚《はば》からぬ高話、人もなげな振舞い、小面憎かったものであろう、夢中になった渠等《かれら》の傍《そば》で、駅員が一名、密《そっ》と寄って、中にもめ[#「め」に傍点]組の横腹の辺《あたり》で唐突《だしぬけ》に、がんからん、がんからん、がんからん。
 「ひゃあ、」と据眼《すえまなこ》に呼吸《いき》を引いて、たじたじと退《すさ》ると、駅員は冷々然として衝《つ》と去って、入口へ向いて、がらんがらん。
 主税も驚いて、
「切符だ、切符だ。」
 と思わず口へ出して、慌てて行くのを、
「おっと、おっと、先生、切符なら心得てら。」
「もう買っといたか、それは豪《えら》い。」
 惣助これには答えないで、
「ええ、驚いたい、串戯《じょうだん》じゃねえ、二合半《こなから》が処フイにした。さあ、まあ、お乗んなせえ。」
 荷物を引立《ひった》てて来て、二人で改札口を出た。その半纏着《はんてんぎ》と、薄色背広の押並んだ対照は妙であったが、乗客《のりて》はただこの二人の影の
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