言淀んで、
「何は、」
お蔦に目配せ、
「茶はないのか。」
「お茶ッて? 有りますわ。ほほほほ、まあ、人に叱言《こごと》を云う癖に、貴郎《あなた》こそ端近で見ッともないじゃありませんか―ありますわ―さあ、あっちへいらっしゃい。」
と上ろうとする台所に、主税が立塞がっているので、袖の端をちょいと突いて、
「さあ、」
め[#「め」に傍点]組は威勢よく、
「へい、跡は明晩……じゃねえ、翌《あした》の朝だ。」
「待《まち》なッてば、」
「可いよ、めのさん。」
「はて、どうしたら、」と首を振る。
「お前たちは、」
と主税は呆れた顔で呵々《からから》と笑って、
「相応に気が利かないのに、早飲込だからこんがらがって仕様がない。め[#「め」に傍点]組もまた、さんざ油を売った癖に、急にそわそわせずともだ。まあ、待て、己《おれ》が話があると言えば。
そこでだ……お茶と申すは、冷たい……」
と口へつけて、指で飲む真似。
「と行《や》る一件だ。」
「め[#「め」に傍点]組に……」
「沢山だ、沢山だ。私《わっし》なら、」
と声ばかり沢山で、俄然《がぜん》として蜂の腰、竜の口、させ、飲もうの構《かま
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