とで飛附いて見ると、あたかもその裏へ、目的物が出る筈《はず》の、三の面が一小間切抜いてあるので、落胆《がっかり》したが、いや、この悪戯《いたずら》、嬢的に極《きわま》ったり、と怨恨《うらみ》骨髄に徹して、いつもより帰宅《かえり》の遅いのを、玄関の障子から睨《ね》め透《すか》して待構えて、木戸を入ったのを追かけて詰問に及んだので、その時のお妙の返事というのが、ああ、私よ。と済《すま》したものだった。
 それをまたひとりでここで見直しつつ、半ば過ぎると、目を外らして、多時《しばらく》思入った風であったが、ばさばさと引裂《ひっさ》いて、くるりと丸めてハタと向う見ずに投《ほう》り出すと、もう一ツの柱の許《もと》に、その蝙蝠傘《こうもり》に掛けてある、主税の中折帽《なかおれ》へ留まったので、
「憎らしい。」と顔を赤めて、刎《は》ね飛ばして、帽子《ハット》を取って、袖で、ばたばたと埃《ほこり》を払った。
 書生が、すっ飛んで、格子を出て、どこへ急ぐのか、お妙の前を通りかけて、
「えへへへ。」
 その時お妙は、主税の蝙蝠傘を引抱《ひっかか》えて、
「どこへ行《ゆ》くの。」
「車屋へ大急ぎでございます
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