揉んだ様子だったが、ツンと怒った顔をしたと思うと、お盆を差出した女中《おんな》と入違いに、洋燈《ランプ》棚へついと起《た》って、剪刀《はさみ》を袖の下へ秘《かく》して来て、四辺《あたり》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》して、ずぶりと入れると、昔取った千代紙なり、めっきり裁縫《しごと》は上達なり、見事な手際でチョキチョキチョキ。
 母様《かあさん》は病気を勤めて、二階へ先生を起しに行って、貴郎《あなた》、貴郎と云う折柄。書生は玄関どたんばたん。女中はちょうど、台所の何かの湯気に隠れたから、その時は誰も知らなかったが、知れずに済みそうな事でもなし、またこれだけを切取っても、主税の迷惑は隠されぬ、内へだって、新聞は他《ほか》に二三種も来るのだけれども、そんな事は不関焉《おかまいなし》。
 で、教頭の説くを待たずして、お妙は一切を知っていたので、話を聞いて驚くより、無念の涙が早かったのである。
 と書生はまた、内々はがき便《だより》見たようなものへ、投書をする道楽があって、今日当り出そうな処と、床の中から手ぐすねを引いたが、寝坊だから、奥へ先繰《せんぐり》になったのを、あ
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