すね。」
「どうしてね? 主税さん。」
「だって、明後日《あさって》お持ちなさろうという絵を、もう今日から御手廻しじゃありませんか。」
「翌日《あした》は日曜だもの、遊ばなくっちゃ、」
「ああ日曜ですね。」
と雫を払った、硯は顔も映りそう。熟《じっ》と見て振仰いで、
「その、衣兜《かくし》にあります、その半紙を取って下さい。」
「主税さん。」
「はあ、」
「ほほほほ、」とただ笑う。
「何が、可笑《おか》しいんです。え、顔に墨が刎《は》ねましたか。」
「いいえ、ほほほほ。」
「何ですてば、」
「あのね、」
「はあ。」
「もしかすると……」
「ええ、ええ。」
「ほほほ、翌日《あした》また日曜ね、貴郎《あなた》の許《とこ》へ遊びに行ってよ。」
水に映った主税の色は、颯《さっ》と薄墨の暗くなった。あわれ、仔細《しさい》あって、飯田町の家はもう無かったのである。
「いらっしゃいましとも。」
と勢込んで、思入った語気で答えた。
「あの、庭の白百合はもう咲いたの、」
「…………」
「この間行った時、まだ莟《つぼみ》が堅かったから、早く咲くように、おまじないに、私、フッフッとふくらまして来たけれ
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