と抓《つま》んで、蚤《はや》いこと、お妙の袖摺《そです》れに出そうとするのを、拙《まず》い! と目で留め、教頭は髯で制して、小鼻へ掛けて揉み上げ揉み上げ揉んだりける。
 英吉は眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、急いでその名刺と共に、両手を衣兜《かくし》へ突込んだが、斜めに腰を掉るよと見れば、ちょこちょこ歩行《ある》きに、ぐるりと地図を背負《しょ》って、お妙の真正面《まっしょうめん》へ立って、も一つ肩を揉んで、手の汗を、ずぼんの横へ擦《こす》りつけて、清めた気で、くの字|形《なり》に腕を出したは、短兵急に握手の積《つもり》か、と見ると、揺《ゆる》がぬ黒髪に自然《おのず》と四辺《あたり》を払《はらわ》れて、
「やあ、はははは、失敬。」
 と英吉大照れになって、後ざまに退《さが》って(おお、神よ。)と云いそうな態《たい》になり、
「お遊びにいらっしゃい、妹たちが、学校は違いますが、皆《みんな》貴女を知っているのですよ。はあ……」
 と独《ひとり》で頷《うなず》いて、大廻りに卓子《テイブル》の端を廻って、どたりと、腹這《はらんば》いになるまでに、拡げた新聞の上へ乗懸《
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