すぞ!」
 簪《かんざし》の花が凜《りん》として色が冴えたか気が籠って、屹《きっ》と、教頭を見向いたが、その目の遣場《やりば》が無さそうに、向うの壁に充満《いっぱい》の、偉《おおい》なる全世界の地図の、サハラの砂漠の有るあたりを、清《すずし》い瞳がうろうろする。
「勿論早瀬は、それがために、分けて規律の正しい、参謀本部の方は、この新聞が出ない先に辞職、免官に、なったです。これはその攫徒に遭った、当人の、御存じじゃろうね、坂田礼之進氏、あの方の耳に第一に入ったです。
 で、見ないんなら御覧なさい。他《ほか》の二三の新聞にも記《か》いてあるですが。このA……が一番|悉《くわ》しい。」
 と落着いて向うへ開いて、三の面を指で教えて、
「ここにありますが、お読みなさい。」
「帰って、私、内で聞きます。」と云った、唇の花が戦《そよ》いだ。
「は、は、は、貴娘、(内の人)だなんと云ったから、極《きま》りが悪いかね。何、知らないんなら宜《よろ》しいです。私は貴娘の名誉を思って、注意のために云うんだから、よくお聞きなさい。帰って聞いたって駄目さね。」
 と太《いた》く侮《あなど》った語気を帯びて、

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