。そういう者の許《とこ》へ貴娘出入りをしてはなりません。知らない事はないのでしょう。」
 妙子は何にも言わなかったが、はじめて眩《まぶ》しそうに瞬きした。
 小使が来て、低頭して命を聞くと、教頭は頤《あご》で教えて、
「何を、茶をくれい。」
「へい。」
「そこを閉めて行け、寄宿生が覗くようだ。」

       四十八

 扉《と》が閉ると、教頭|身構《みがまえ》を崩して、仰向けに笑い懸けて、
「まあ、お掛なさい、そこへ。貴娘《あなた》のためにならんから、云うのだよ。」
 わざわざ立って突着けた、椅子の縁《へり》は、袂《たもと》に触れて、その片袖を動かしたけれども、お妙は規則正しいお答礼《じぎ》をしただけで、元の横向きに立っている。
「早瀬の事はまだまだ、それどころじゃないですが、」と直ぐにまた眉を顰《ひそ》めて、談じつけるような調子に変って、
「酒井さん、早瀬は、ありゃ罪人だね、我々はその名を口にするさえ憚《はばか》るべき悪漢ですね。」
 とのッそり手を伸ばして、卓子《テイブル》の上に散ばった新聞を撫でながら、
「貴娘、今日のA……新聞を見んのですか。」
 一言聞くと、颯《さっ》と瞼
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