からですか。」
「知りません。」
 と素気《そっけ》なく云った。
「知らない?」
 と妙な顔をして、額でお妙を見上げて、
「知らないですか。」
「ええ、前《ぜん》にからですもの。内の人と同一《おんなじ》ですから、いつ頃からだか分りませんの。」
「貴娘は幾歳《いくつ》ぐらいから、交際をしたですか。」
「…………」
 と黙って教頭を見て、しかも不思議そうに、
「交際って、私、厭《いや》ねえ。早瀬さんは内の人なんですもの。」と打微笑む。
「内の人。」
「ええ、」と猶予《ためら》わず頷《うなず》いた。
「貴娘、そういう事を言っては不可《いけ》ますまい。あれを(内の人)だなんと云うと、御両親をはじめ、貴娘の名誉に関わるでしょうが、ああ、」
 と口を開いてニヤリとする。
 お妙はツンとして横を向いた、眦《まなじり》に優《やさし》い怒が籠ったのである。
 閑耕は、その背けた顔を覗込《のぞきこ》むようにして、胸を曲げ、膝を叩きながら、鼻の尖に、へへん、と笑って、

「あんな者と、貴娘交際するなんて、芸者を細君にしていると云うじゃありませんか。汚わしい。怪しからん不行跡です。実に学者の体面を汚すものです
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