思わん奴が、なぜ芸者を引摺込んで、師匠に対して申訳のないような不埒《ふらち》を働く。第一お前も、」
 稲妻が西へ飛んで、
「同類だ、共謀《ぐる》だ、同罪だよ。おい、芸者を何だと思っている。藪入《やぶいり》に新橋を見た素丁稚《すでっち》のように難有《ありがた》いもんだと思っているのか。馬鹿だから、己が不便《ふびん》を掛けて置きゃ、増長して、酒井は芸者の情婦《いろ》を難有がってると思うんだろう。高慢に口なんぞ突出しやがって、俯向《うつむ》いておれ。」
 はっと首垂《うなだ》れたが、目に涙一杯。
「そんな、貴郎、難有がってるなんのッて、」
「難有くないものを、なぜ俺の大事な弟子に蔦吉を取持ったんだい!」
 主税は手を支《つ》いて摺《ず》って出た。
「先《せ》、先生、姉さんは、何にも御存じじゃございません、それは、お目違いでございまして、」
 と大呼吸《おおいき》を胸で吐《つ》くと、
「黙れ! 生れてから、俺《おいら》、目違いをしたのは、お前達二人ばかりだ。」

       四十二

「お言葉を反《かえ》しますようでございますが、」
 主税は小芳の自分に対する情が仇《あだ》になりそうなので、
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