、先生が、そう思ったら何とするよ。」
「誰が、先生、そんな事。」
「いいや、内の玄関の書生も云った、坂田が己の許《とこ》へ来たと云うと、お前の目の色が違うそうだ。車夫も云った、車夫の女房も云ったよ。(誰か妙の事を聞きに来たものはないか。)と云って、お前、車屋でまで聞くんだそうだな。恥しくは思わんか、大きな態《なり》をしやあがって、薄髯《うすひげ》の生えた面《つら》を、どこまで曝《さら》して歩行《ある》いているんだ。」
と火鉢をぐいぐいと揺《ゆすぶ》って。
四十一
「あっちへ蹌々《ひょろひょろ》、こっちへ踉々《よろよろ》、狐の憑《つ》いたように、俺の近所を、葛西《かさい》街道にして、肥料桶《こえたご》の臭《におい》をさせるのはどこの奴だ。
何か、聞きゃ、河野の方で、妙の身体《からだ》に探捜《さぐり》を入れるのが、不都合だとか、不意気《ぶいき》だとか言うそうだが、」
噫《ああ》、礼之進が皆|饒舌《しゃべ》った……
「意気も不意気も土百姓の知った事かい。これ、河野はお前のような狐憑じゃないのだぜ。
学位のある、立派な男が、大切な嫁を娶《と》るのだ。念を入れんでどうす
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