のが、縁談の事に付いて、坂田が己《おれ》に紹介を頼んだ時、お前なぜそれを断ったんだ。」
「…………」
「なぜ断った?」
「あんな、道学者、」
「道学者がどうした。結構さ。道学者はお前のような犬でない、畜生じゃないよ。何か、お前は先方《さき》の河野一家の理想とか、主義とかに就いて、不服だ、不賛成だ、と云ったそうだ。不服も不賛成もあったものか。人間並の事を云うな。畜生の分際で、出過ぎた奴だ。
 第一、汝《きさま》のような間違った料簡《りょうけん》で、先生の心が解るのかよ! お前は不賛成でも己は賛成だか、お前は不服でも己は心服だか――知れるかい。
 何のかのと、故障を云って、(御門生は、令嬢に思召しがあるのでごわりましょう。)と坂田が歯を吸って、合点《のみこ》んでいたが、どうだ。」
「ええ! あの、痘痕《あばた》が、」
 と色をかえて戦《わなな》いた。主税はしかも点々《たらたら》と汗を流して、
「他《ほか》の事とは違います、聞棄てになりません。私《わたくし》は、私は、これは、改めて、坂田に談じなければなりません。」
「何だ、坂田に談じる? 坂田に談じるまでもない。己がそう思ったらどうするんだ
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