て、先方《さき》でも落籍《ひき》祝いに、赤飯ぐらい配ったろう、お前食ったろう、そいつを。
蒸立だとか、好い色だとか云って、喜んでよ、こっちからも、※[#「にんべん」、第4水準2−1−21]《にんべん》の切手の五十銭ぐらい祝ったろう。小遣帳に記《つ》いているだろう。その婦《おんな》の行先が知れない奴があるものか。
知らなきゃ馬鹿だ。もっとも、己《おれ》のような素一歩《すいちぶ》と腐合おうと云う料簡方《りょうけんかた》だから、はじめから悧怜《りこう》でないのは知れてるんだ。馬鹿は構わん、どうせ、芸者だ、世間並じゃない。芸者の馬鹿は構わんが、薄情は不可《いか》んな! 薄情は。薄情な奴は俺《おい》ら真平だ。」
「いつ、私が、薄情な、」
と口惜《くや》しく屹《きっ》となる処を、酒井の剣幕が烈《はげし》いので、悄《しお》れて声が霑《うる》んだのである。
「薄情でない! 薄情さ。懇意な婦《おんな》の、居処を知らなけりゃ薄情じゃないか。」
「だって、貴郎《あなた》。だって、先方《さき》でも、つい音信《たより》をしないもんですから、」
「先方《さき》が音信《たより》をしなくっても、お前の薄情は帳消
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