、辞《いな》むべき数《すう》ではない。……柏家は天井裏を掃除しても、こんなものは出まいと思われる、薄汚れたのを、電燈の下《もと》に、先生の手に、もじもじと奉る。
引取《ひっと》って、ぐいと開けた、気が入って膝を立てた、顔の色が厳しくなった。と見て胆《きも》を冷したのは主税で、小芳は何の気も着かないから、晴々しい面色《おももち》で、覗込《のぞきこ》んで、
「心当りでも出来たんですか。」
不答《こたえず》。煙草の喫《すい》さしを灰の中へ邪険に突込《つっこ》み、
「何は、どうした。」
と唐突《だしぬけ》に聞かれたので、小芳は恍惚《うっとり》したように、酒井の顔を視《なが》めると……
「あれよ、ちょいと意気な、清元の旨《うま》い、景気の可《い》い、」
いいいい本を引返《ひっかえ》して、
「扱帯《しごき》で、鏡に向った処は、絵のようだという評判の……」
と凝《じっ》と見られて、小芳は引入れられたように、
「蔦吉さん。」
と云って、喫いかけた煙管《きせる》を忘れる。
主税は天窓《あたま》から悚然《ぞっ》とした。
「あれはどうした。」
「え、」
「俺はさっぱり山手《のて》になって容子を
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