を、姉さんは柔順《おとなし》いから、
「お出花が冷くなって、」
 と酒井の呑さしを取って、いそいそ立って、開けてある肱掛窓《ひじかけまど》から、暗い雨落へ、ざぶりと覆《かえ》すと、斜めに見返って、
「大《おおき》な湯覆《ゆこぼ》しだな、お前ン許《とこ》のは。」
「あんな事ばかり云って、」
 と、主税を見て莞爾《にっこり》して、白歯を染めても似合う年紀《とし》、少しも浮いた様子は見えぬ。
 それから、小芳は伏目になって、二人の男へ茶を注《つ》いだが、ここに居ればその役目の、綱次は車が着いた時、さあお帰りだ、と云うとともに、はらはら座敷を出たのと知るべし。
 酒井は軽《かる》く襟を扱《しご》いて、
「そこで、御馳走は、」
「綱次さんが承知をしてます。」
「また寄鍋だろう、白滝沢山と云う。」
「どうですか。」
 と横目で見て、嬉しそうに笑《えみ》を含む。
「いずれ不漁《しけ》さ。」
 と打棄《うっちゃ》るように云ったが、向直って、
「早瀬、」と呼んだ声が更《あらた》まった。
「ええ。」
「先刻《さっき》の三世相を見せろ。」
 一仔細《ひとしさい》なくてはならぬ様子があるので、ぎょっとしながら
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