》ばっかり使わないで、ちっと立って食うものの心配でもしろ。民《たみ》はどうした、あれは可《い》い。小老実《こまめ》に働くから。今に帰ったら是非酌をさせよう。あの、愛嬌《あいきょう》のある処で。」
「そんなに、若いのが好《すき》なら、御内のお嬢さんが可いんだわ。ねえ早瀬さん。」
 これには早瀬も答えなかったが、先生も苦笑した。
「妙も近頃は不可《いけな》くなったよ。奥方と目配《めくばせ》をし合って、とかく銚子をこぎって不可《いか》ん。第一酌をしないね。学校で、(お酌さん。)と云うそうだ。小児どもの癖に、相応に皮肉なことを云うもんだ。」
「貴郎《あなた》には小児でも、もうお嫁入|盛《ざかり》じゃありませんか。どうかすると、こっちへもいらっしゃる、学校出の方にゃ、酒井さんの天女《エンゼル》が、何のと云っちゃ、あの、騒いでおいでなさるのがありますわ。」
「あの、嬰児《あかんぼ》をか、どこの坊やだ。」
「あら、あんなことを云って。こちらの早瀬さんなんかでも、ちょうど似合いの年紀頃《としごろ》じゃありませんか。」
 と何でものう云ってのけたが、主税は懐中《ふところ》の三世相とともに胸に支《つか》え
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