「で、ございますかな。」とようよう膝去《いざ》り出して、遠くから、背を円くして伸上って、腕を出して、巻莨《まきたばこ》に火を点《つ》けたが、お蔦が物指《ものさし》を当てた襦袢《じゅばん》の袖が見えたので、気にして、慌てて、引込める。
「ちっと透かさないか、籠《こも》るようだ。」
「縁側ですか。」
「ううむ、」
と頭《かぶり》を掉《ふ》ったので、すっと立って、背後《うしろ》の肱掛窓《ひじかけまど》を開けると、辛うじて、雨落だけの隙《すき》を残して、厳《いかめ》しい、忍返しのある、しかも真新《まあたらし》い黒板塀が見える。
「見霽《みはら》しでも御覧なさいよ。」
と主税を振向いてまた笑う。
酒井が凝《じっ》と、その塀を視《なが》めて、
「一面の杉の立樹だ、森々としたものさ。」
と擽《くすぐ》って、独《ひとり》で笑った。
「しかし山焼の跡だと見えて、真黒は酷《ひど》いな。俺もゆくゆくは此家《こちら》へ引取られようと思ったが、裏が建って、川が見えなくなったから分別を変えたよ。」
そこへ友染がちらちら来る。
「お出花を、早く、」
「はあ、」
「熱くするんだよ。」
「これ、小児《こども
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