に射られるようで堅くなってどこも見ず、面《おもて》を背けると端《はし》なく、重箪笥《かさねだんす》の前なる姿見。ここで梳《くしけず》る柳の髪は長かろう、その姿見の丈が高い。
三十七
「お敷きなさいなね、貴下《あなた》、此家《ここ》へいらっしゃりゃ、先生も何もありはしません、御遠慮をなさらなくっても可いんですよ。」
と意気、文学士を呑む。この女は、主税が整然《きちん》としているのを、気の毒がるより、むしろ自分の方が、為に窮屈を感ずるので。
その癖、先生には、かえって、遠慮の無い様子で、肩を並べるようにして支膝《つきひざ》で坐りながら、火鉢の灰をならして、手でその縁をスッと扱《しご》く。
「茶を一ツ、熱いのを。」
酒井は今のを聞かない振で、
「それから酒だ。」
綱次は入口の低い襖《ふすま》を振返って、ト拝む風に、雪のような手を敲《たた》く。
「自分で起《た》て。少《わか》いものが、不精を極《き》めるな。」
「厭《いや》ですよ。ちゃんと番をしていなくっては。姉さんに言いつかっているんだから。」
と言いながら、人懐かしげに莞爾《にっこり》して、
「ねえ、早瀬さん。」
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