博多の帯腰すっきりと、片手を懐に、裄短《ゆきみじか》な袖を投げた風采は、丈高く痩《や》せぎすな肌に粋《いなせ》である。しかも上品に衣紋《えもん》正しく、黒八丈《くろはち》の襟を合わせて、色の浅黒い、鼻筋の通った、目に恐ろしく威のある、品のある、[#「、」は底本では「。」]眉の秀でた、ただその口許《くちもと》はお妙に肖《に》て、嬰児《みどりご》も懐《なつ》くべく無量の愛の含まるる。
一寸見《ちょっとみ》には、かの令嬢にして、その父ぞとは思われぬ。令夫人《おくがた》は許嫁《いいなずけ》で、お妙は先生がいまだ金鈕《きんぼたん》であった頃の若木の花。夫婦《ふたり》の色香を分けたのである、とも云うが……
酒井はどこか小酌の帰途《かえり》と覚しく、玉樹一人縁日の四辺《あたり》を払って彳《たたず》んだ。またいつか、人足もややこの辺《あたり》に疎《まばら》になって、薬師の御堂の境内のみ、その中空も汗するばかり、油煙が低く、露店《ほしみせ》の大傘《おおがらかさ》を圧している。
会釈をしてわずかに擡《もた》げた、主税の顔を、その威のある目で屹《きっ》と見て、
「少《わか》いものが何だ、端銭《はした》
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