柱《ひょうちゅう》のように水が刎《は》ねる、小児《こども》たちは続けさまに石を打った。この騒ぎに、植木屋も三人ばかり、ずッと来て、泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ……と感に堪えて見ている。
見事なものです。実際|巧《たくみ》に泳ぐ。が、およそ中流の処を乗切れない。向って前へ礫《つぶて》が落ちると、すっと引く。横へ飛ぶと、かわして避ける。避けつつ渡るのですから間がありました。はじめは首だけ浮いたのですが、礫を避けるはずみに飛んで浮くのが見えた時は可恐《おそろし》い兀斑《はげまだら》の大鼠で。畜生め、若い時は、一手《ひとて》、手裏剣も心得たぞ――とニヤニヤと笑いながら、居士が石を取って狙《ね》ったんです。小児《こども》の手からは、やや着弾距離を脱して、八方《はちぶ》こっちへ近づいた処を、居士が三度続けて打った。二度とも沈んで、鼠の形が水面から見えなくなっては、二度とも、むくむくと浮いて出て、澄ましてまた水を切りましたがね、あたった! と思う三度の時には、もう沈んだきり、それきりまるで見えなくなる。……
水は清く流れました、が、風が少し出ましてね、何となくざっと鳴ると、……まさか、そこへ――水を潜
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